PhysicsLab. 2017 Blog

東京大学理学部物理学科有志による、第90回五月祭企画「PhysicsLab.2017」のブログです。準備の様子や各班の内容を紹介していきます。

世界はどこまで細かく分割できるか

初めまして。量子測定班です。

 

突然ですが、みなさん、身の回りにあるものを思い浮かべてください。何でも構いません。思い浮かべましたか?

次に、その思い浮かべたものを、どんどん分解していってください。例えばりんごを思い浮かべたのなら、りんごを半分に切り、さらにその半分、そのまた半分...という感じで分解していってください。分解できましたか?

途中で分解をやめてしまえば、恐らく薄っぺらいりんごやらなんやらが出来上がったと思います。では、分解を途中でやめずに、際限なく分解していったらどうなるでしょうか?いくらりんごを切っていっても、どんどん薄いりんごができるだけでしょうか。それともどこかで切れなくなってしまうのでしょうか?

このように、物体を細かく切り刻んでいったらどうなるだろうか、という問いを考えたことがある人は、少なくないのではないかと思います。もちろん物体に限らず、例えば光や電気でも構いません。

 

このような問いに、初めて明確な答えを提示したのが20世紀初頭の物理学でした。

その答えは、物体を細かく分割していくと、どこかで分割できなくなってしまう、という驚くべきものでした。

また、そのようなとても小さなスケールの世界では、われわれが普段使っているルールが成り立たず、どうやら別のルールが成り立っていることが分かりました。

 

量子測定班では、小さなスケールで成り立つルールはどのようなルールか、ということを考え、実験を行っています。

 

詳しい内容は、次回以降です。ではまた!

シンクロ班ってなあに

初めまして!

シンクロ班の宮崎です。

 

さて、みなさんは「お見合い」をしたことがありますか?

 

互いに道を譲ろうとするも、同じ方向にかわそうとして、結局通せんぼしてしまう「お見合い」のことです。ではどうして「お見合い」が起きてしまうかわかりますか?

 

実は、人は向かい合った状態で足踏みを続けると、無意識のうちに歩調を合わせてしまい、鏡の向かい合わせの関係のように同期してしまうのです。すると、同じタイミングで、同じ方向の足を出してしまい、めでたく「お見合い」成立となります。

 

人の足踏みのように一定のリズムで運動を繰り返すものを「振動子」と言います。放っておけばそのまま足踏みを続けるでしょう。しかしこの「振動子」を2つ用意すると、だんだん足が揃っていき、「同期」します。

 

 

別の例を紹介しましょう。

ホタルも同期を起こします。

たくさんのホタルが木に止まっています。ホタルはそれぞれ一定のリズムで光っており、最初はバラバラに見えます。しかしこれを見守っていると次第に光が揃っていくではありませんか!

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┃ホタル 同期     ┃検索┃

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ホタルの明滅という「振動子」があって、それを木に複数用意すると「同期」する、というお話でした。(全ての種のホタルが同期するわけではありません。)

 

 

そろそろ、このシンクロ班がどういうものかわかったのではないかと思います。

一定周期で運動する「振動子」を、"複数個"用意し、それらを"相互作用"させることで、「同期」させて喜んでいる班です。

五月祭当日はメトロノーム、ホタル、他数種類の同期現象をお見せします。初めバラバラだったメトロノームが徐々に揃っていき、完全に同期したときの迫力ある光景は感動すること間違いありません。

 

 

ここまでたくさん書きましたが、まだまだ語り足りません。もっともっと面白い例がありますし、皆さんの身近なところにもたくさん同期現象が潜んでいます。五月祭に足を運んでいただき、ぜひその目と耳で同期現象を楽しんでもらいたいです。

宇宙線ってなんですか

こんにちは!宇宙班班長の佐藤です。

最近は外もだんだん暖かくなってきていて、春の兆しを感じます。嬉しいものです。家のマスクはいくつあっても足りなくなってしまいますが!

さてさて、このブログではこれまで色々な班が自分たちのやっていることを紹介してきたわけですが、我々も例にもれることなく、さっそく自分語りを始めていきます。

 

宇宙班は宇宙線ミューオンの飛来軌道を一定程度可視化し、飛来方向のデータを集める」実験をおこなっています。これは適当にそれっぽい言い方をしてみただけで、有り体に言ってしまえば、宇宙線ミューオンと呼ばれている粒が、どの方向からやってきているのか調べる」というだけです!

以下では、宇宙線ってなんですかというところを説明していこうと思います。口頭で説明するとよく間違われてしまうのですが、宇宙「船」ではありません!説明の途中で「ああ、ヤマトみたいなやつの話をしてるのかと思ってた」と言われることが多々あります。

 

みなさんがなんとなく知っているように、宇宙では非常に大きなスケールで様々な現象が進行しています。ブラックホールや銀河の運動などは私たちが想像するよりも、はるかに大規模な物理現象です。そういった現象のいくつか――特に言われがちなのは太陽のフレア(太陽表面での爆発)や超新星爆発(一つの星が爆発すること)――は、それが生じたときに陽子などの粒子を周囲に放出します。爆発爆発と言っているようにもともとの現象はとてつもないエネルギーをもっているので、この放出された粒子も非常に高いエネルギーをもつことになります。宇宙のいたるところに、この粒が飛んでいることが知られています。高いエネルギーをもつこれらの粒子は人体に有害ですが、宇宙服はこれらから身を守ってくれる構造になっています。宇宙旅行のときは宇宙服を脱がないようにしましょう。

この粒は目には見えません。視力に自信があっても見えません!あまりにも小さすぎるからです。例えば陽子については、その大きさはだいたい、10のマイナス15乗メートルです。これだけではピンと来ないので、わかりやすく言うならば、大人の人に対する陽子の大きさというのは、地球の公転半径に対する一円玉の大きさよりも小さいのです!これはたまげたものです。

 

さてさて、宇宙のいたるところを飛ぶ、この目に見えない粒を宇宙線と呼びたいのですが、実はこれは「一次宇宙線」と呼ばれるものでしかありません。今回の実験で我々が観察するミューオンは「二次宇宙線」と呼ばれるものです。

 

一次、二次という名前からもわかるように二次宇宙線は一次宇宙線が原因となって発生するものです。宇宙からやってきた一次宇宙線は地球の大気に到達するや否や、大気中の原子や電子にぶつかることで、原子を崩壊させたり、電子を吹き飛ばしたりします。原子が崩壊することで生じた粒子や、吹き飛ばされた電子は、再び、他の原子や電子と反応し、崩壊や跳飛、エネルギーの発生など様々な相互作用を引き起こします。この過程において副産物がどんどんネズミ算式に増えていきます。これらがまとめて「二次宇宙線」と呼ばれています。

一次宇宙線と同じように、目には見えませんが、地球上表面のあらゆるところに二次宇宙線が降り注いでいます。一次宇宙線を起点として、結果的に上空からたくさんの二次宇宙線が降り注ぐこの様は、電磁シャワーと称されます。

とすると、我々の体も常時、二次宇宙線によって貫かれているわけです。幸い、我々の体は二次宇宙線に感覚を覚えるようにはできていません。いまこれを読んでいる人で貫かれている感覚がする人はいますか?いたとしても、それは二次宇宙線ではありません。たぶん何かに実際に貫かれているので、よく確認したほうがよいでしょう。

 

地球上表面のあらゆるところと言いましたが、建物内にもやってくる種類の宇宙線があります。そういったものはコンクリートや木を透過することができるわけです。種類が限られるとは言え、屋内でも宇宙線は飛び交っています。我々、宇宙線からはそう簡単には逃れられないのです。もっとも、宇宙線があまり届かないような場所も存在します。どういう場所だろうかといろいろ考えてみてください。

 

ミューオンは二次宇宙線であり、屋内にもやってくる部類のものです。我々はこのミューオンがどの方向からやってきているのかを調べています。もちろん目には見えません。宇宙線実験でよく言われるように、「見えないものを見る」というわけです。目には見えないものについて、頭を凝らし、飛んできた方向を調べたりだとか数を数えたりだとかする。これは非常にエキサイティングなことだと思うので、ぜひご覧になってください!

 

最後は駆け足気味になってしまいましたが、いまから実験道具の検討をしにみんなで秋葉原に行かなければいけないので、今日はこんな感じで終わりにします!ではでは。

第三の柱・計算機と物理

こんにちは

 

初めまして、計算機班です。

 

計算機班は計算機(コンピュータ)のちからを借りて物理現象を理解しようとすることを目標に活動している班です。

 

今回は計算機がどうやって物理学に役立つのか見ていきましょう。

 

 

例えば、引力について考えてみます。

 

高いところでリンゴを離すと下に落ちていきます。

これはニュートンが明らかにしたように、地球とリンゴの間に引力が働いた結果です。

 

引力は地球にもリンゴにも等価に働くので、リンゴと同じように、地球はリンゴに落ちていくという言い方もできます。

しかし地球はリンゴや私たちよりとても重いので地球が動いていないように見えるだけです。

 

ではここからは同じくらいの質量の物体の数を2,3,...と増やしていってみましょう。

 

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まずは物体が2個あった時。同じくらいの加速度で互いに近づいていきます。

高校では運動方程式を立てて動き方を計算し、実際に計算ができたと思います。

動き方が想像できますね。

 

次は物体が3個あった時。三角形状に配置されていれば重心あたりに近づいていきそうです。

詳しく「ここに近づく」とは言い切れませんが、なんとなく動き方が想像できそうですね。

 

では4個は、5個は…100個はどうなるでしょう。

もはや厳密に「ここに移動する」と言い切れないどころか大体の動き方さえ想像できません。

 

 

実際、優秀な物理学者でも100個の物体がある場合の動き方はわかりませし、

なんと、たった3個でも動き方を予測することはできないのです。

 

こういった時に計算機のちからを借りることになります。

計算機は繰り返し計算を素早く行うことが得意ですから、計算機に数値的に考えてもらうのです。

 

現実には物体がたくさんあって互いに引力、はたまた斥力を及ぼし合うという状況はたくさん考えられますから、こういった問題を考えることには非常に意味があることがわかると思います。

 

 

 

他にも計算機の活躍する場面はあります。

 

先のように計算機の力を借りたり、物理法則をたくさん見つけた後のことを考えてみましょう。

物理法則がたくさんわかったので、今度はこれらの法則を使って様々な現象を予測したくなります。

 

例えば一般相対性理論を作り上げたアインシュタイン重力波の存在を予測し、米国のレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」が2016年に重力波を直接観測したのは記憶に新しいです。

 

アインシュタインは方程式を解析的に(方程式を数値計算を使わず式変形して問題を考えることを「解析的」と言います。)計算して重力波の存在を予測できたわけですが、先の例のように物体がたくさんある系の動きだったり、様々な科学的現象が確率的に起こるような問題では解析的に取り組むことができなくなります。

 

こういった時に計算機を使って数値的に取り扱っていきます。

 

ではどんな問題も計算機で解いていけばいいではないかという声が聞こえてきそうですが、

解析解にはいいことがあって、現象の性質を如実に反映する結果を得られるので解析的に解ける場合は解析解を求めることが目標になります。

 

解析的に解けるのかわからない問題、部分的には解析的に解けるがある一部は解けないなどという場合には場合には計算機を使って、結果の性質を掴んでからそれをヒントに新しい現象の理解につながるということもあるので、方程式を計算機で解くことは非常に有効な手段であるのです。

 

 

 

2例説明しましたが、計算機が物理学では最高のアイテムであることがわかったと思います。

 

上の2例以外にも計算機が物理学で使われる場面はたくさんあり、計算機は理論・実験問わず幅広く使われているツールであるばかりか、第三の柱として計算物理学という分野があるほどです。

 

 

それだけ幅広く使われる計算機ですから、私たち計算機班では班員それぞれが興味の有る物理現象をテーマに取り上げて計算機を使ってアプローチしています。

 

Physics Lab.2017では五月祭までの研究成果を発表します。

計算機がどんな風に使われているのか、そしてその威力を是非体感しに来てください。

ヘリウムの不思議

こんにちは、低温班班長の垂水といいます。

 

我々低温班では、「液体ヘリウムの超流動デモ動画の撮影」を行っています。

 

今日は、ヘリウムについてお話ししたいと思います。

 

ヘリウムと言えば、声を高くするパーティーグッズや、飛んでいく風船などによく使われますね。これらはともに、「気体の」ヘリウムを用いています。しかし、「液体の」ヘリウムはあまり日常では見かけません。どうすれば液体のヘリウムができるのでしょうか?

 

身近な物質、たとえば水で考えてみましょう。

水は、0度よりも低い温度では氷、つまり固体になり、0度から100度では水、液体になり、100度以上では水蒸気、つまり気体になります。これらは「水の三態」などと呼ばれます。

このように「三つの状態」があるという性質は、地球上のほぼ全ての物質について共通に言えることです。当然ヘリウムにも当てはまり、条件によってはこれまで述べていない「固体の」ヘリウムも存在することがあります。

水では、温度が低い順に固体→液体→気体となりました。この順番も大体の物質が同じで、空気中の物質など、普段気体でいるような物質も、十分に冷やしてやれば液体や固体になります。液体ヘリウムを得るには「温度を下げる」ことが必要です。液体ヘリウムにするには、-269度(!!!)という非常に低い温度にする必要があります。ちなみに、温度にはもう一つ「絶対温度」というものがあり、そちらで表せば4.2Kとなります。

(この温度に達するにはどうしたら良いのか?知りたい方は、ぜひ我々の展示にいらしてください。)

 

ここで、ヘリウムに特有の不思議な性質で、「大気圧ではどんなに冷やしても固体にならない」というものがあります。この性質は、ヘリウムが軽いこと、ヘリウムが希ガスであることに関係しています。このように、「軽い」という力学的な性質が、沸騰や凝固に関係するのは不思議ですね!

 

このように、関係なさそうなことが実は関係していた、というのは物理ではよくあることで、これが物理の醍醐味の一つであると思います(僕が物理の醍醐味を語るのはおこがましいですが...)。

 

各班が、各々伝えたい「物理」があると思います。ぜひ当日展示を見て、また班員と話して、「物理」を感じてみてください。

 

 

【spin spin spin】

 初めまして、こんにちは。電子スピン班班長、及び副統括の齊藤巧真と申します。

このブログを訪ねて下さって、ありがとうございます。ぜひ一緒に物理を楽しみましょう。どうぞよろしくお願いします。

 

このブログを読んでいるあなたは、多かれ少なかれ物理に興味を持った人だと思います。物理と一口に言っても幅は広く、分野は多岐に渡ります。興味の対象も、また今の段階で持っている知識も人それぞれでしょう。

Physics Lab.2017は、来てくれる人みんなが、来る前よりほんのちょっと物理が好きになって帰ることを目指して、目下準備の真っ最中です。

 

さて、僕が班長を務める電子スピン班の説明をします。

 

あなたは、「電子」と聞いたら何を思い浮かべるでしょうか。電流は電子の流れ(の反対向き)だと中学校で習うので、それをイメージする人が多いかもしれません。

電流は、電子の持つ「電荷」という性質の流れです。電荷は、主に電気に関する作用をもたらします。

 

ところで、電子はもう一つ、「スピン」という性質を持ちます。これが何に関係するかというと、主に磁気に関する作用をもたらすのです。

例えば小学校に置いてあった棒磁石。あれが磁石としての性質を持つのは、磁石の中にある電子のスピンが自然に揃っていることが原因です。

スピン同士の間には相互作用がはたらきます。僕たち電子スピン班の展示では、その相互作用がもたらす効果の一環として、磁性体内のスピンの様子や、skyrmionというトポロジカルな性質を持つ準粒子などをお見せします。

 

最後に。実は数学にも強い興味があるので、機会があれば次はトポロジーの話もしてみたいですね。何学科だよって言われてしまいそうですが…。

トポロジーは、2016年度のノーベル物理学賞を受賞したテーマに大きく関わる数理です。

 

それでは、Physics Lab.2017による楽しい物理の世界を、どうぞお楽しみに!

ショー班 ごあいさつ

 

 

はじめまして!

このブログに来てくれて、ありがとうございます。

 

私たちは、物理ショー班といいます。よろしくお願いします。

 

自己紹介をする前に、みなさんにちょっとお聞きしたいことがあります。

 

みなさんは、

「当たり前だと思っていたけど、考えてみれば不思議なこと」

に出会ったことはないでしょうか。

 

普段何気なく受け入れているけれど、なぜそうなるのかはよくわからない…

 

そのようなことに出会ったことはありませんか。

 

 

例えば、私はコマを見ているときにそんな気持ちになります。

 

コマ回しをすると、

 

コマは回り終えるまで倒れません

 

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しかし、回さずに立たせようとすると…

 

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倒れてしまいます。

 

「回っていると倒れない」

 

これと似たことって、コマ回し以外にもありますよね。

 

例えば,自転車 に乗っているときとか。

 

 

もう一つ、鏡を見ていて 不思議に思ったこともあります。

 

鏡って、左右を反対に映しますよね。

 

でも、上下は反対にしません。

 

実際に見てみると分かりますよね。

 

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でも、よく考えるとこれは不思議なことです…

 

鏡の表面は、左右も上下も同じように真っ平らで、銀色です。

 

左右と上下に違いがあるとは思えません。

 

それでは、どうして鏡は左右だけを入れ替えて映すのでしょうか。

 

ちょっと不思議に思えてきませんか?

 

 

と、ここまでが前置きです。長くなってすみませんでした。

 

それでは、自己紹介をします。

 

私たち物理ショー班は、五月祭で実験ショーを行います。

 

会場は小柴ホールです。

 

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写真はおととしの様子です。今年が3回目になります。

 

「考えてみると不思議だ」という身の回りのできごとを題材に、

 

みなさんと一緒に実験を行えたらいいなと思っています。

 

中にはとっても不思議な実験もありますが、

 

わかりやすくお伝えするため、私たちも頑張ります。

 

楽しい、面白い実験を考えているので、

 

ぜひ、来てください!

 

よろしくお願いします。

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